知床岬クルーズ

 知床岬クルーズで遭難事故が発生した。

 2022年4月25日の時点で、亡くなられた方が11名。謹んで哀悼の意を表したい。不明の方が15名。無事に発見されることを切に願っている。

 私は8年ほど前に、知床岬までのクルーズを体験した。海岸沿いに知床岬の先端までを往復するコースで、遭難するなどとは夢にも思わなかった。今回遭難された方々も夢にも思わなかっただろう。

救命胴衣(2014年)

 乗客は皆、甲板員の指示に従って救命胴衣をつけたが、救命胴衣をつけていても、海水温が低ければ生存が難しくなるとは思わなかった。

カムイワッカの滝

カシュニの滝

ルシャ海岸のヒグマの親子

 海岸沿いは見どころが多い。船長は乗客によい景色を見せるために海岸に近づこうとするが、座礁する危険もあり、慎重に操舵して前進・後退を繰り返していた。船長は、海底の地形、風向き、潮の流れを熟知していないと務まらないと思った。

知床岬灯台

 知床岬は、道路がないので、カムイワッカの滝、カシュニの滝、ルシャ海岸、知床岬灯台などは、クルーズ船からしか見ることができない。ヒグマとの遭遇率は95%前後というから、かなり確率が高い。 
 知床五湖も回ったが、一湖、二湖までは観光客も多いが、三湖から先は観光客も少なく、クマと遭遇するのは怖かった。その点、クルーズ船からクマが見られるのは安全だが、それはクルーズ船の安全が保証されることが前提だ。

 

漁船(ルシャ海岸)

 普段であれば、近くで操業している漁船も多く、他のクルーズ船も行き来しているので、万が一転覆しても救助されただろう。それだけに、漁船や他のクルーズ船が出港しない時に、単独で出港したのが残念でならない。

 知床岬コースは、9,000円弱。26人分で二十数万円。コロナ禍で経営が苦しかったのかもしれないが、多くの人命、未来が失われたこと、家族、親族、友だちの方々の悲しみを思うと、やりきれない。遭難したクルーザーは、私が利用した会社のものではなかったが、私が利用した会社の船も捜索に参加していた。他のクルーズ船の会社、漁業関係者、海上保安庁、知床の皆さんの方々の苦労を思うと、ますますやりきれない。

 クルーズ船は2時間弱をかけて海岸を回り、帰りは海岸から離れて、1時間程度でウトロ港に戻る。知床岬までの間で座礁し、浸水したのであれば、遅くとも12時までには事故の連絡ができたはずで、出港後3時間も経って、午後1時18分に海上保安庁に救助要請というのは理解できない。1時間もの間、何をしていたのか。

 楽しい記憶として残るはずだったクルーズが、このような悲しい結果となってしまったことは、返す返すも残念でならないし、やりきれない。