キーウ コーリング

KYIV CALLING(キーウ コーリング) Beton(ベトン)

 

Beton - Kyiv Calling

(official cover version of London Calling by The Clash)

https://www.youtube.com/watch?v=xWQUkRKqp2E

 

 「ベトン」の「キーウ コーリング」という曲は、イギリスのパンクバンド「ザ・クラッシュ」の「ロンドン コーリング」を元歌としたものだ。「ロンドン コーリング」は、BBC第二次世界大戦下のナチス・ドイツと占領地に向けた放送の出だしを模したものと言われている。

 「ザ・クラッシュ」の「ロンドン コーリング」が若者や、虐げられた人々へのアジテーションだとするなら、「キーウ コーリング」は、全世界の人々へのアジテーションだと思う。「ロンドン コーリング」が第二次世界大戦の情況を踏まえて、1970年代のロンドンの情況を歌っているとするなら、「キーウ コーリング」はさらに、それらを踏まえて、現在のウクライナの情況を歌っている。歌詞は「ロンドン コーリング」の歌詞をベースに、見事にウクライナの情況に置き換えている。

 「Phoney Beatlemania」は「Phoney Putinmania」に。インチキプーチンマニアはみんな破滅した。
「こちらキーウ、我々には戦闘機がない。空をきれいにして、ロケットの攻撃を止めてくれ」 というのはウクライナの人々の切実な願いだ。

「Meltdown expected」は「ロンドン コーリング」では1979年のスリーマイル島原発の事故を歌っているが、「キーウ コーリング」では、チョルノービリ(チェルノブイリ)やザポリージャ原発へのロシア軍の攻撃だ。

「the wheat is growing thin」もそのままだ。「growing thin」どころか、小麦畑はロシアの戦車に荒らされ、ロシア軍に略奪され、ようやく収穫できた小麦も輸送できないでいる。

「‘Cause London is drowning and I live by the river」は「‘Cause Kyiv is rising.  We live by resistance」に。ウクライナの人々の士気の高さを感じさせる。

「Kyiv calling to the NATO zone. Forget it, brother, we can’t go it alone」 こちらキーウ、NATOの国々へ。NATOだってことを忘れちまえ、兄弟、俺たちだけじゃ戦えない

「Russian ships fuck you」は、もちろん、ズミイヌイ島(スネーク島)の国境警備隊ロシア海軍の降伏勧告に返した言葉だ。切手にもなった。

 

 歌いたいものを歌え それがパンクだ

 4月9日付の東京新聞の朝刊に、ジョー・ストラマー(1952〜2002)の写真と話が載っていた。写真家の「ハービー・山口」氏が、たまたまロンドンの地下鉄でジョー・ストラマーを見かけ、勇気を振り絞って「ジョーさんですよね。撮っていいですか」と聞いたところ、ジョー・ストラマーは快く応じてくれて、「撮りたいものは撮るんだ。それがパンクだ」と言って去っていったそうだ。(東京新聞「一枚のものがたり」2022年4月9日)

 今回の「キーウ コーリング」に対して、クラッシュのメンバー3人は全面的に支持したそうだ。ジョー・ストラマーが生きていたら、もちろん彼も支持しただろう。「歌いたいものを歌え それがパンクだ」と言って。

 

(日本語訳)

こちらキーウ、遠くの町々へ
今、宣戦布告がなされ、戦いが始まった
こちらキーウ、全世界へ
中立なんてないよ、いい子のみんな
こちらキーウ、見てるだけじゃダメだ
インチキプーチンマニアはみんな破滅した
こちらキーウ、我々には戦闘機がない
空をきれいにして、ロケットの攻撃を止めてくれ

 

(コーラス)
鉄の時代がやって来る、カーテンが下がってくる

メルトダウンが始まるかもしれず、小麦は細くなってる
エンジンは止まりそうだが、俺たちは怖れない
キーウには勢いがあり、俺たちは抵抗している

 

こちらキーウ、NATOの国々へ
NATOだってことを忘れちまえ、兄弟、俺たちだけじゃ戦えない
こちらキーウ、死んじまったゾンビたちへ
プーチンを支えるのはやめよ―そしてひと息ついてみなよ
こちらキーウ、俺たちは叫ばなくちゃいけない
俺たちが話している間にも、オリガルヒが逃げ出していく
こちらキーウ、俺たちは撤退なんてしない
ここは俺たちの国だ ロシアの軍艦なんかクソ食らえ

 

(コーラス)
鉄の時代がやって来る、カーテンが下がってくる
エンジンは止まりそうで、小麦は細くなってる
核のエラーがあるかもしれないが、俺たちは怖れない
キーウには勢いがあり、俺たちは抵抗している

 

さあ聞いてくれ
こちらキーウ、そうさ、俺たちはずっとここにいるぜ
お前はモスクワが言ったことを知ってるか?

そうさ、すべてウソっぱちさ!
こちらキーウ、ダイヤルはトップに合わせて
この歌を聞いて、戦闘機を送ってくれないか?
こちらキーウ こちらキーウ

こんな風に感じたことは、今までなかったぜ…